2/16/2011

雪降る奥多摩で2泊3日のツエルト体験

















もの好きが多い。
雪の降る奥多摩にこんなに人が来ている。
考える事はみんな一緒のようだ。

「むふ」

3連休に雪が降る?
天気予報のアナウンサーの声に僕は反応した。
以前から一度歩いてみようと思っていたコースがある。

秩父・奥多摩の地図を広げて眺めて見た。
3日あれば楽しみながら歩けるな。

「行こ」

東日原からヨコスズ尾根・長沢背稜を通り雲取山。
雲取山から石尾根を通り鷹ノ巣山に登り・・
鷹ノ巣山で稲村岩尾根を下り東日原。

奥多摩山歩きの表銀座と裏銀座を一周するコースである。

雪の降る中を縦走して見たい。
買ったばかりのツエルトを試してみたい。
僕に取ってツエルトは雪山でこそ試したい道具だ。

ツエルトは1枚の布である。
緊急時にテントにしたりタープにしたり・・
防寒用に体に巻きつけたりして使う。

僕が購入したツエルトは少し大きい。
所持するソロ用のテントの3分の1くらいだ。
重さも大きさも3分の1くらいになる。

「すばらしい」

ツエルトをテントとして使う。
そんな話を言うと多くの人は寒いよと言う。

僕は言う。

「テントも寒いよ」

ツエルトやテントは雨風雪を防ぐものだと思う。
身体の温かさは別のものでカバーする。
僕はそう考えている。

重量の快適を求めるか少しの室内の快適を求めるか?
僕はその中間を求める事にした。

ツエルトの中では大きく。
テントと比べると3分の1くらいの大きさ。
1枚の布がテントになったりタープになったりする。
必要な時に必要な形に変化できるツエルトを購入した。

「魔法の布である」

どこでも泊まれる装備を持つ。
心にゆとりが生まれるので安心して歩ける。

「僕はヤドカリくんである」

雪の中で非自立型ツエルトをテントとして使う。
しっかりと細引きにテンションをかけられるようにする。
テンションがかけられなければテントとして使えない。
木や石などをペグの代わりに利用して設営する。

何もない時用にコンビニのビニールを持って来た。
その中に雪を積めて雪の中に埋める。
結構しっかりとペグの役目をする。

今回は木の伐採した近くでツエルトを張れた。
丸太に細引きをひっかけテンションをかけられた。

「ラッキーである」

冬の山の風の強さは驚くほど強い。

「ゴー」と風が唸り声を上げながら襲いに来る。

「飛んじゃう~」

風の音に慣れるまで大変である。

・・・。

雪の降る2月の奥多摩の山。
外気温度はマイナス11.8度を示している。
ツエルト内はマイナス10度だ。
マイナス10度は寒い。

「こーるど」

ツエルト内にそのまま靴を置いておくと凍る。
翌朝には靴がカチンコチンに凍ってしまうのだ。
こんな状態の靴を履いたら凍傷になる。

寝る時は汚れを落とした靴をビニールに入れる。
その靴を寝袋の中に入れて抱いて寝る。
自然の中では体温を利用する。

「抱かれた靴は暖かい」

寝る時の寝袋の中。
手袋や帽子や靴下などで一杯になる。

子供の時におもちゃを布団の中に隠して入れた。
親に見つかり取り上げられた事がある。
その時のことを思い出す。

あの時に言えば良かった。

「凍らないように暖めている」と・・

・・・。

奥多摩の山歩きのルートは整備されている。
人の手が入り多くの人が踏んだルートは分かりやすい。
雪が降ると自然に近い状態に戻る。
踏み跡が消えてしまう。

「迷う」

慎重に自然を読み取り感を働かせる。
頭の中に浮かんで来る地図と見える山の位置。
ルートの名称などから想像できるルートの状態。
石尾根と書かれていれば石の尾根の上を歩くと分かる。
いくら歩いても尾根に出ないなら間違いと分かる。

歩いた先で見つける人工物。
ルート上を歩いている事を確認させてくれる。
自然を求めて歩いているのだが・・

「ほっとする」

今回の一番の難所は長沢背稜に入る前に訪れた。
水松山(あららぎ)あたりで迷った。
人の通った形跡が読み取れない。

のっぺりとした林の中。
雪で消された踏み跡。

「分からない」

ルート開拓者がどんなルートを描いたか?
頂上を目指さずわき道にルートを求めたのか?
僕ならのっぺりとした林の中から出る事を求める。

「頂上だろ」

頂上に行くとテープが木に巻いてあった。
どうやら正解のようである。

そこで右と左に分かれていたが標識がない。
両方のルートにテープがついている。
頭の中に浮かんで来る地図は右だ。
右が長沢背稜だ。

しばらく歩いていると標識があった。
長沢背稜と書かれている。

「当たりだ」

その標識の横で反対側から来た人達が休んでいる。
真冬の雪降る山の中で汗だらけである。
どうやらラッセルしてきたようだ。

僕に気がつくと声をかけて来た。

「ラッセルしといたから・・」

・・・。

僕は彼らの顔を見た。
大変だった事が顔から読み取れる。
お礼を言っておこう。

「助かります」

この先は迷うことなく行けそうである。

長沢背稜は裏銀座と言われるように道幅が狭い。
地味だが渋いコースである。
雪の量も多い。

歩いてみると汗だらけの彼らの姿が頭に浮かぶ。
僕はかなりラッキーだったようである。

この道を知っている人達なのだろう。
雪の上についたライン取りを歩くと分かる。
よく踏み固められた地面の感覚が伝わる。

「山屋さんのようだ」

初めての人ではこんなに的確なルート取りはできない。
どこを歩くのか読み取れない場所が多い。
雪が全てを隠してしまう。

山歩きは達成感がある。
雪山は登る達成感以外にルートを読み取る。
そんな達成感が味わえる。

僕も少しだけ味わえた。

2泊のツエルトでの宿泊体験と雪山歩き。

「楽しかった」

冬の秩父・奥多摩はいろんなルートが楽しめる。
もっと幅を広げると山梨や丹沢とも繋がる。
ルート取りによってオリジナルもできる。

地図を見て考えると楽しい。

妄想してしまう。

むふ。